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香港・アジア・
         タランチュラ奇談


このページは98年香港在住時に作ったページ。学名等変更がありましたので、いずれ訂正します。

香港ペット街に異色をはなつ「奇珍屋」に行こう

香港旺角通菜街(KCR廣九鉄道「旺角駅弼街方面へ出る) Fax.2754-2968

香港で最も人気のあるペットはサカナでしょう。大きな水槽に金魚・熱帯魚を飼うのは 当たり前、レストランともなればアジア・アロワナを置いているところも少なくありま せん。ペット用のサカナのメッカは、九龍(カオルン)の通菜(トンチョイ)街です。何十 軒もの金魚・鯉・熱帯魚屋が軒をつらねます。週末ともなれば大変な賑わいです。

さて、このペット通りには、ハムスター屋などもあるのですが、爬虫・両生類屋も3 件だけあります。中でも異彩をはなつのが、奇珍屋、英語名"Monster House"。ほんの 6畳一間ほどのスペースの小さな店なんですが、爬虫・両生類の他に、タランチュラを あつかっています。長髪のケンさんという兄ちゃんがクモ担当で、もの静かな、売り込 む気のあるのかないのか良く分からない人ですが、こちらがクモに興味があって、デリ カップを平気で手に取ったりすると、「にいちゃん、そっちのキングバブーンはどうや? 元気ええで。」といった調子で(英語ですけど)誘いをかけてきます。(そして、キング バブーンを買ったとき、「プラケースもいるか? そしたら30香港ドル増しね」と言わ れたときは、開いた口がふさがらんかった。そりゃ、ケースごといるわいな。誰が あんな凶暴なクモ素手で持って帰りますかっちゅうの!)

この奇妙な店の見どころは、何といっても怪しげな「中国名」(と、やっぱり英語名も ちょくちょく怪しげ)。たとえば、キングバブーンが「皇帝把布」とか、ゼブラレッグが 「斑馬脚蜘蛛」とかは直訳で分かるんだけど、「老虎尾藍蜘蛛」(英語名タイガー ブルーも初耳)とか、
「重金属」(ヘビメタか! 英語名はメタリック・ゴールド)とか、 さらには「印度熱帯雨林花蜘蛛」が実は西アフリカ産のトーゴ・スターバーストだったという めちゃくちゃな話も。

すべてアメリカからの輸入で、価格はアメリカ相場とさほど変わらないので、良心的 ではあります。クモ形類のビネガロン ヒヨケムシが入ったり、結構マニアックなところもあります。 ただ、学名や原産地などほとんど気にせず売っているので、いつも買ったあとで、正体 を確認するのに困ったりします。通菜街を行き来する香港人は、ものめずらしそうに覗いては、広東語できゃあきゃあ言っていく、「名物」ペットショップです。

タイ・バンコック週末に出現する巨大青空市場の「ヌンの店」

チャトゥチャク・マーケットは、土日にだけ開くバンコック郊外の青空市場。衣服、食器、 電器部品から、生鮮食料、植木、ペット、観光みやげまで、ありとあらゆるものが手に はいる巨大なマーケットです。ペットのコーナーにいくと、金魚、熱帯魚、犬猫にくわえ、 爬虫両生類の店もあります。ヌンの店(看板があるわけではありません)では、「黒、青、 茶」の三種類のタランチュラを扱っています。学名はおろか、英語名も知らずにただ、 黒いの、青いの、で通しているぐらいですから、まあめちゃくちゃ安い(とくにコバルトブルー 成体2200円とか、タイランドブラックらしき地元産1500円とか)とはいえ、みなWC (野生採集個体)で、健康状態は保証のほどではありません。ペットボトルのなかに閉じ 込められたタランチュラやトカゲたちは、ちょっとかわいそうで、思わず買い取ってし まいたくなったりします。

この店の見どころは、恐ろしいタランチュラのハンドリング。無知なのか、地元民に は既に毒への免疫があるのか、凶暴の極致・コバルトブルーやタイランドブラックらしき 大型種を平気で素手に乗せたりして見せるのです。管理状態が悪くて個体が弱っている (笑)可能性があるとはいえ、普通のディーラーには真似できぬわざです。店の人は ほとんど英語はできませんから、タイ語で「ほら、こんなにおとなしいよ。」なんて 言って売り込んでたら、これは恐怖です。ここで買ったコバルト・ブルーは、我が家で 元気に暴れまくって(笑)おり、私はケージに箸をいれるときも細心の注意を払います。 素手なんて。。。

食用タランチュラの国

実は、タイ北部の先住民の間では、タランチュラを食べます。
「タイランド・エディブル」(Haplopelma albostriatum)という種類がおりますが、"Edible"とは「食用」の意です。そんなことを知らなかっ た数年前、タイ北部に学生たちと旅行して、チェンマイで最後の晩、地元のうけいれを してくれた若者が、郷土料理レストランに連れていってくれました。牛の脳みそだの、 肉のサシミだの、コオロギのから揚げだの食べさせられた後、「まさか、クモはあるまい、 あったら食っちゃる!」と冗談を言ってみたら、店の人が「うちの店にはありますよ」。 「しまった!」と思ったものの、私のクモ好きを知る学生達にはやし立てられてひっこみがつかず、 「よーし、注文しよう!」と一大決心したところ、幸か不幸か、その日は食材(笑)が切れてて 料理はできませんでした。ほっ...^_^;;。 「またのお来しを...」

のちに聞いたことですが、タイ政府は食用タランチュラの絶滅を心配して保護種に 指定しているとか。CITES条約の指定にはかかっていませんが、WCの同種は、 なるべく飼育下で繁殖させましょう。そして、子どもがたくさん生まれたら、我々も 一匹くらい(物は試しに)食べてみようか。クモではありませんが、クモ形類に系統分類上 近縁の カブトガニは、タイではもっとポピュラーな料理です。こっちは、バンコックで食べまし た。日本だったら天然記念物なのにぃ!

(後日談:香港から近い中国アモイではまだ生きている新鮮なカブトガニを海鮮料理店で 売ってました。750円で料理してもらった上に、殻をお土産にもらって帰りました。 よーし。次はカブトガニの生体輸入だぁ!)


もうひとつ、タランチュラを食用にする土地はブラジル・アマゾン。世界最大級のタランチュラ、 ゴライアス・バードイーターを食べているという贅沢な(?)先住民族 Piaroa がいます。ビデオ 番組で見ました。儀式に用いるかぶりものに金属のタランチュラがあしらってあるのにも 注目。食べかたは、

@ 腹部をちぎって、中身を葉っぱの上に出し、葉っぱで包み焼きとする。

A 脚は焼いて、カニのように食べる。

B 最後に牙を楊枝につかって、歯の掃除をする。

というのがマナーのようです。

この番組制作について、くわしくはこちら。 取材をしたのは、カナダのタランチュラ専門家リック・ウェスト


セレノコスミア属の謎のクモたちについて

私・みるかし姫がちょっと気になる東南アジア・オセアニア系のタランチュラ は、セレノコスミア。まだ分類もはっきりしてないんですけど、以下のような何 種類かが知られています。

オーストラリアのトオボエオオツチグモ(Selenocosmia crasipes)

「その足跡は引きずっていったことを示していた。我々は追跡して16メートル離れたところで
ニワトリを見つけた。仲間の一人がそれをつかむと、蜘蛛は抵抗して引っ張り返した。観察す
ると。直径が5センチメートルほどの穴の底からニワトリの足の一方をつかんだクモがいるのが
わかった。」(1919年キスホルム氏の記述・『クモ・ウォッチング』ポール・ヒルヤードより)

「ウズラ食い蜘蛛(Quail Eater)」の異名をもとるトオボエオオツチグモ(Barking Tarantula) が、実際にニワトリを獲れるかどうかは疑問です。そのサイズはせいぜい7センチですから。 「遠吠えする」というのもスゴイ表現ですが、キング・バブーン式の触肢とあごの付け根を摩擦させる 威嚇音「histling」ではなく、実は捕まったウズラの声ではないか、という意見もあります(シドニーの ハリー・ウィルソン氏)。いずれにせよ、謎の多いクモです。

オーストラリアは、生物の輸出入に厳しい制限を課しているので、この種が外で 売りに出る可能性はありません。逆にオーストラリア内でタランチュラを飼うとなると、 このクモくらいしか大きなサイズのものはない、とのことです。最近、シドニーの ペットショップにもお目見えしているようです。

The Pet Centre, 127 York Street, Sydney 2000, NSW, Australia
phone 61-2-9264 3515

Kellyville Pets, 106b Windsor Road, Kellyville 2155, NSW Australia,
phone 61-2-9629 3282

オーストラリアご旅行の際には、ぜひお立ち寄りを。


ヴェトナム・ブラックベルベット

(Selenocosmia sp ?と して入手したのですが、のちに Coremiocnemis sp と同定されました)は、私のお気に入 りの新種です。アメリカ・フロリダの Glades Herp から個人輸入しました。 名前は「ベトコンの美少女」といいます。(とか、言ってたら、Glades Herpから連絡 がきて、「ごめんごめん、あれ、ベトナム産じゃなくてマレーシア産だったらしい」 とのこと。うーむ。これだからアジア産は謎めいている。単にいいかげんに売られている、 ともいえるが。でも、もう名前までつけちゃったのに、どうしてくれるん!)

つやのある真っ黒なスレンダーボディで、俊足、凶暴。まさに黒豹! 前脚をふ りあげた威嚇姿勢をとったとき、鋭く長い牙をむき出す様子は 圧巻です。まだ全長10センチほどですが、良く食べるので、もっともっと大き くなったらいいなあ、と期待しています。

でも、絶対に逃がしちゃまずい一頭。

<吠え声をあげニワトリをも殺せるというトオボエ オオツチグモの一種が、香港在住の日本人宅から逃 走し、香港警察に加え、中国人民軍が出動する騒ぎ>

なんて国際面をにぎわしたくありません。



インドネシアのジャワ・イエローニー
Selenocosmia javanensis
ニューギニアのマウント・オブリー・ブラウン
Selenocosmia lanipes
他にも、

S. honesta ファク・ファク・オチェ(パシフィック・オチェ)

S. javanensis sp. スマトラ・マスタードブラウン

S. lyra アジアン・ブラウン

S. stirlingi オーストラリアン・ブラウン

S. strubelli インドネシアン・チェスナッツ

など、採集地によって異なる名がつけられてます。東南アジア・オ セアニアは、島で互いに隔離されるため、種が多様化するんですね。アメリ カのリック・ブロウマンによると、最近タランチュラ市場に出てきたらしく、 まだアメリカでのブリーディングはないだろうといってます。


香港にて発見、本属の新種だったら、Selenocosmia Mirukashiiと命名の予定

カナダのリック・ウェストさんから、 香港に棲息するタランチュラがいるという 情報をいただいて、山道を探していて採集したものです。ハリー・ウィルソン氏によると、 中国大陸には体長10センチになるSelenocosmia huwenaが記録されている といいます。中国は、まだまだタランチュラ未知の世界です。


中国の S.huwenaについては、タランチュラディーラーの間でも謎のよう ですが、 1997年中国から発表の毒性に関する論文に名前が見られます



香港タランチュラ・オフ実現!!

香港のタランチュラキーパーと出会わない。。。と嘆いてた私ですが、 英文HPを開いていらい、香港在住の人からメールが届くようになりまし た。さっそく会おう、ということになった二人と、 「奇珍屋」で待ち合わせ、そのあと我が家へと、初の香港タランチュラ・ オフが98年旧正月を目の前に実現しました。

ニック・ウォンは、ロックバンド「関係」の仕事で東京にもちょくちょく行く、 という若者で、タランチュラ飼育歴2年、毎土曜に奇珍屋にいっては、無料奉 仕で仕事を手伝っているという「奇珍な」青年です。タランチュラ各種にかな り詳しく、かれの情報では、例の 謎のタイガーブルー幼体(「老虎尾藍蜘蛛」)はコバルトブルーではなく、 タイランドタイガーとのこと。インタネットで見た日本のクモの値段にあきれ かえっているのですが、私が香港への個人輸入をしたことを、農漁局、奇珍屋の ケン、というルートを通じて知ったらしく(狭い世界じゃ)、「ブルーアロー ・バードイーター、輸入したんだって?」と興味深々。次の個人輸入では、香 港でも高価なサブフスカを入手したいといってました。

もう一人は、いいおっさんのエディ・チョウ。サソリのキーパーだったのが、 最近タランチュラ購入を決断。どれがいいか、としきりに英文MLで尋ねた 結果、キング・バブーンを買ったそうです。「ちょっとアラクノフォビア気味」 という彼は、我が家に来て、初めてのチリコモのハンドリングにはしゃいでい ました。

ニックはカメラ持参で、 我が家のクモたちを写真に収めていましたが、特に東京・爬虫類倶楽部で 買った成体「タイランド・ブラック」(後記:実は、別種・Phlogiellus sp.と判明) の美しいベルベット肌に魅入られた様子。 エディは、私のご推薦通り、次はぜひ ストレートホーンドを欲しいから、個人 輸入の際はぜひ一報くれ、とのこと。(ちなみに私のストレートホーンドの写真は、 後日奇珍屋の店頭に張り出されていました。)

ゆっくりいすに座ってくつろぐまもなく、机の上に次々にクモのケースをなら べて、あーだこーだと3人で大騒ぎ。家族はあきれて、別の部屋に引っ込んで いました。

その翌日、もうひとり別の香港在住のタランチュラキーパーからメール。「あ んた、通菜街ペット通り界隈でえらく有名になってまっせ。みんな、話題にし てますがな、自分も一度ウチにおじゃましてよいか」との内容。そうかぁ、こ っちは広東語できんもんやから、みんなが「おい、またあの変な日本人来てん でぇ」と、うわさしてたとは、ツユ知らず(笑)。奇珍屋が「奇珍」だと、 こうしてHPに書いている海松橿姫こそ、香港で最も「奇珍」な日本人と思われてたりし て。。。


「クモはペットとしてみとめない」:香港当局の暴言

香港へのタランチュラ輸入を試みようと、漁農処(Agricultre & Fisheries Department)に問い合わせてみました。1月にもらった返信は、「 CITES(ワシントン条約)の適用を受けるほかには、クモに適用される規制は、香港にはない。 ただし、毒性の極めて強い(very poisonous)クモの輸入は奨励(recommend)しない」 というものでした。その後、アメリカからの個人輸入便が届いた際、空港の通関 手続きで気づいたのは、爬虫類は魚農処の事前許可が必要だがクモは許可なしで 自由に通過、ということ。

ところが、後日ワシントン条約(第II種)対象のタランチュラの輸入許可を申請したところ、 「 メキシカンレッドニーは、公衆安全の見地から、輸入許可しない」と、驚くべ き返信が帰ってきました。もっともおとなしいクモをつかまえて「公衆安全への 脅威」なんて、そんなあほな、と思って、さらに問い合わせの手紙を送ったと ころ、今度は、
「クモの輸入は推奨しません。クモは一般に受け入れられるペットの定義に あいません。多くは攻撃的で、噛まれれば痛みを伴います。もし逃走したら、 近隣の人々を恐怖に陥れ(terrorise)、公衆をパニックに導くかもしれませ ん。また、クモは病気を自動的に媒介します。...妥当な情報を集めるのに 時間がかかって、返答が遅れたことをお詫びします。」
ときました。これじゃあ、どんどん悪くなっていく!

勝手にペットの定義を独占するなー。

terrorising(恐怖政治)は、お前たちの方だー。

クモが病気を媒介なんて聞いたことないぞー。

どこから、こんなインチキ情報集めてきたんじゃー。

と、叫んでみたところで、所詮、お役所ってこんなもの?(ちなみに、中国返還 後も、大半の役人は替わってないので、これは英国時代から引き継がれたクモ への偏見の産物)
もう、いい。こんな連中に二度と相談なんかしません。クモの輸入規制する 法律は香港にはないんですから、だまって個人輸入するのみ(ワシントン条約 対象種以外をねー)。無知の極致の漁農処の推奨なんか受けなくても、ペットぐらい自分で決めます。


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